Reading 25A (5-9)

5 秋からの大学の授業料を払うために、夏休みは車の部品を作る工場で働くことにした。仕事は朝7時から4時までで、朝に弱い僕にはちょっと大変そうだったが、お金はほかのバイトよりうんといいし、昼休みの一時間は、木の下で昼寝ができるそうなので、何とかなるだろうと思って始めたが、これがとんでもない 間違いだった。 (MP3)

 僕の仕事は、ラインの上に乗っている、縦30センチ、横50センチぐらいの大きさのパーツを、一つずつ下ろして箱に入れることだ。このパーツは一個の重さがかなりある。パーツは次から次へ流れてくるし、体を使う仕事に慣れていないので、一日働いたあとは背中や腰が痛くて仕方がない。毎晩苦しんでいる僕を 見て、妹は「働くことの大変さが分かって、怠け者のお兄ちゃんには、いい社会勉強になるわねえ。」と笑っている。お金をもらっても、妹には何も買ってやらないことにした。 (MP3)

6  文学を翻訳することの難しさは、やってみた人にしか分からないだろう。言葉を訳すことはできても、違う言語で、著者のスタイルや、言葉の裏にあるニュアンスまでうまく伝えることはなかなかできない。それとは反対に、科学的な読み物の翻訳は、専門的な知識が必要だが、それがあったら、そんなに時間がかから ないと言えるだろう。 (MP3)

7 台風六号が近づいてきたため、地下鉄もバスもJR線 も、午後6時に全部止まってしまって、今夜は家に戻ることができなくなった。タクシーを使ったら、帰れることは帰れるだろうが、多分空車はなかなか見つからないだろう。僕の勤めている会社の若い人は、みんなオフィスで寝ることにした。窓の外は大雨だったが、近くのコンビニで酒やおつまみを買って来て、大学 の時のゼミ旅行の夜みたいで、みんな楽しそうだった。 (MP3)

8 あなたには、もっとやさしさが必要よ。いくら立派な大学を出て、有名な会社に勤めていても、子どもの気持ちをわかってあげられないあなたは父親としては最低。あなたは子どもの気持ちをゆっくり聞いてあげたことがある?子どもと話すことの大切さをあなたはぜんぜんわかっていないのね。 (MP3)

9 海外出張のため、二、三か月ほど家を留守にするから、悪いけど預かってほしいと言って、細川君が茶色の猫を僕の家に連れて来た。「僕は猫を飼ったことがないから、、」と言ったのだが、ほかに適当な人がいないから頼むと言って、無理に猫をおいて帰ってしまった。仕方がない。細川君によると、この猫は何で も食べるそうだが、特にみそ汁が好きらしい。晩ご飯のために鍋に残しておいたみそ汁は、僕が家に帰った時には、いつもきれいになくなっている。変な猫だ。細川君に名前を聞くのを忘れてしまったが、わざわざメールで聞くのもめんどうくさいと思って、「なな」と呼ぶことにした。この猫を預かった日が七月七日 だったからだ。

  ななは、初めは慣れない家で色々なところを調べているみたいだった。きたない部屋だと思っていたのかもしれない。でも、すぐに一番涼しい東の窓の下を、自分のスペースに決めたようだった。いつもそこで気持ちよさそうに昼寝している。僕の方も、このごろ、ななと一緒の生活に慣れてきて、だんだんかわいいと思 うようになってきた。夕べ、家に戻った時、「ななちゃん、ただいまー。」と言ってから、自分でちょっと恥ずかしくなった。 (MP3)